イギリスに追いつけ追い越せ
まず、当NPOは政治・経済などの利害関係から一切独立していますので、タイトルにそのような意図はないことを宣言しておきます。
さて「医師が電話窓口となった県民の救急医療相談」は全国でも私たちが唯一の存在です。ただ、看護師が窓口となる相談窓口は約20の自治体で#7119として実施されています。
またそもそも#7119は、欧米ですでに実施されていたteletriage(医療機関が電話で受診要否を判断する)を日本に馴染む形で取り入れた事業です。
欧米の中でもとりわけteletriageが発展しているのがイギリスです。背景として、イギリスは医療費の財源が税金のためなるべく安く抑えたい(不要な受診を減らしたい)、しかしそれで医療の質が落ちすぎては困る、というわけで医療の周辺に仕組みやしかけをいろいろと作っています。
イギリスでは夜間救急に限らず、住民がかかりつけ医を予約外受診したいと思った際にはまず電話して医師や看護師に緊急性の判断を受けて受診のタイミングが決まります。国が推奨するteletriageのシステムを各医療機関の事情に馴染むようにカスタマイズして運用しているようですが、うまくいっている機関は一貫して患者の満足度を落とさずに緊急性に応じて受診が振り分けられているという成果が出ています。
私たちの知る限りでは、どんな医療機関が成功しるのか、その要因は抽出できていません。あくまで憶測の域を出ませんが、要因のひとつとして電話対応の質が関わっていると考えています。電話であっても口調や言葉選びで共感的態度や誠実さは伝わるでしょうし、単なるトリアージに留まらないマネジメントが関わっていそうです。
イギリスの話が長くなりましたが、ここから日本について。超高齢社会を迎え医療負担が増大する中で、イギリスの実践はいいヒントになりえます。ただし医療制度が異なるので、鵜呑みにはせず日本型改良バージョンを作るのが肝でしょう。この点で、私たちが行っているのはまさにteletriageなのでイギリスのエビデンスを大いに参考にはできますが、そのうち可能なものを適用しながら、さらにいいものを作るのが大目標になります。
たとえば成功要因と考えている電話対応の質については、高文脈言語である日本語ではより一層当てはまりそうで、単なるトリアージから一歩進んだマネジメントを達成するためには住民ニーズに即した内容を把握しながらブラッシュアップしていく必要がありそうです。
当団体のこれまでの相談対応事例からは、経過に応じたきめ細かい助言に対して評価を頂くことが多かったので、これはひとつのカギかもしれません。そして、詳細は機会を改めてお伝えしたいと思いますが、これは普段現場に従事する臨床医だからこそ可能なスキルであり当団体の持つ大きな強みです。実際に、まだとても小さなデータではありますが窓口開設後のトリアージ機能および相談者の満足度はイギリスの平均的な結果を上回っています。
おそらくそう遠くない未来に議論されるであろうteletriageの日本型改良バージョンを見据えたとき、当団体の実践がひとつのモデルになることを目標に、トリアージの正確性と住民満足度の二軸を常に高いレベルで満たすことができるようブラッシュアップしていきます。
最後に、4月の窓口開設以来、1年間大きなトラブルなく運営できたのは団体を取り巻く関係者様、住民の皆様のおかげです。
この場をお借りして深謝申し上げます。
また来年以降もよろしくお願いいたします。
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